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創造的組織の資質(5)創造神-4 創造的破壊神
創造神は、無から有を生み出すというだけでなく、円環的な時間の展開のなかで、破壊と創造を繰り返すといったイメージを持つ。

イノベーションの概念を生んだオーストリアの経済学者ヨーゼフ・シュンペーター(1883-1950)は、経済の均衡を打ち破るイノベーションと、それが生み出すダイナミックな経済の姿を打ち出した。その鍵となるのは創造的破壊、破壊と創造である。

いうまでもなくイノベーションは技術だけでなく、組織や市場、企業自体をも対象とする。松下電器は、リストラとグループの主要企業の完全子会社化などによって、新生「パナソニック」となったが、その「中村改革」は「破壊と創造」をスローガンとして断行された。

こうしたダイナミックなリーダーシップは、過去の成功モデルに安住せず、結果的にサステナブルな成長を続けようとする企業にとって、不可欠の要素だ。それはいわば、創造と破壊と維持の法則に則ったものといってもい。そしてこれは、20世紀製造業に共通する基本的な精神ではないかと思われる。製造業ばかりではない、流通等の産業においても業態革新は不可避である。それを失った企業は衰退する。

創造と破壊と維持の法則は、インド(ヒンドゥー教)におけるブラフマー、シヴァ、ヴィシュヌの三神の役割そのものである。これら三神、つまり創造神(ブラフマー)、破壊神(シヴァ)、保持神(ヴィシュヌ)を一体として考えるのが三神一体説(Trimurti )である。この三神は、創造、維持、破壊をもって世界の本質を明らかにする。

こうした法則は、弁証法の、正(テーゼ、現状)、反(アンチテーゼ、破壊)、合(ジンテーゼ、創造)といったプロセスにも共通するダイナミズムだ。

この三神から連想するのは、モノづくりの現場である。ただしそれは、小手先の技術ではなく、材料との真摯な向き合い、材料に変化を与え(破壊し)、加工し、新しい何かを生み出す創造的プロセスだ。たとえばいまだに伝わる古代の製鉄技術「たたら」は、人間の能力を最大限引き出して行う、破壊と創造の儀式のように見える。(たたらを見守るのは金屋子の姫なる女神であるが)。



「たたら」の最終段階。まだ赤熱の鉄の塊。砂鉄が木炭の火によって三日三晩融解され、近代製鉄技術でも不可能な純度の高い鉄、玉鋼(たまはがね)を生ずる。(Photo by Noboru Konno)


| - | 08:32 | comments(0) | trackbacks(0) |
創造的組織の資質(4)創造神-3 運命の女神
グーグルの成功ほど、運命の仕業として最近語られるものはない。トップページにはI'm Feeling Luckyなるボタンがあるし、創業者の一人、ラリー・ページがいうように、「基本的な技術があって、それでできるおもしろいことを見つけて、そしてもしラッキーならそれがデカイものに変わるんだ」などといって、よくluckyという言葉を使う。幸運を引き寄せる力というのは,創造的組織にとって重要な資質である。

運命には必然と偶然の側面がある。前者から人間は逃れることはできない、と考えられている。こうした必然的な運命の神は古代からあった。ギリシア神話の運命の女神モイライは三人の老女神である。一人は運命を紡ぎ出し、もう一人は運命を割り当て、運命の糸の長さを決める。そして運命の糸を裁断するもう一人。こうして紡ぎだされる運命には逆らえない気がする。モイライに似たのがゲルマンや北欧神話の女神、ノルネンだ。同じく三姉妹で、シェークスピアの「マクベス」には運命を操る三人の魔女として登場している。

一方、偶然を司る女神は、運命の女神というより「幸運の女神」である。古代ギリシアの運命の女神テュケはその源流だ。テュケは都市の財産と繁栄、運命の女神であった。ギリシア語のテュケーは、「偶然出会う」、「行き当たる」という意味だ。テュケはローマ時代になってフォルトゥナ、つまり幸運の女神Fortuneとなった。ただしフォルトゥナは古代ローマから祭られていて、イタリア半島の地方神でもあったと思われる。

このフォルトゥナが面白い。運命を操るための舵を持ち、球に乗っている。それは不確実不安定な運命を象徴するものだ。ドイツの画家、アルブレヒト・デューラーの版画、「大運命」の女神像(これはネメシスと呼ばれ、フォルトゥナに結びつけれる)も、やはり球体のようなものの上に立っている。

また幸福が長続きしないことを意味する、底抜けの壺を持っている。テュケは花や果物で満たされた円錐形の角(コルヌコピア)を持っていたとされるが、それが発展したのだろうか。また、フォルトゥナは皆が幸運を掴もうとして掴めないため、後ろ髪が抜けてなくなり前髪しかないとも言われる。

こうした運命の女神の力を味方にするのがグーグルのような若く創造的な企業だ。ルネサンスのフィレンツェ人、マキアヴェリは、新興勢力の君主がいかにパワーを維持するかを説いた『君主論』で、次のようなことを言っている。必然には抗えないとはいえ、偶然を引きつけることはありえるのだ。

「人は、慎重であるよりは、むしろ果断にすすむほうがよい。なぜなら、運命は女神だから、彼女を征服しようとすれば、打ちのめし、突き飛ばす必要がある。運命は、冷静な行き方をする人より、こんな人の言いなりになってくれる。」(『君主論』第25章)



豊穣をもたらしてくれるが、不安定できまぐれな運命の女神を引き寄せるには、運命に対する積極的な態度が不可欠だ。(Photo by Noboru Konno)
| - | 22:08 | comments(0) | trackbacks(0) |
創造的組織の資質(3)創造神-2 ミューズ
ミューズ(Muse ムーサMusa)はギリシア神話に登場する詩と音楽の女神だが、何よりアーティストに霊感を与える神として知られている。芸術家の創作にミューズは欠かせない。

しばしばそれは生きた女性達である。ピカソは常にそうした女性を求めたし、フランスのシャンソン歌手、ジュリエット・グレコはサン・ジェルマン・デ・プレの地下酒場に出入りするうちに「実存主義のミューズ」と騒がれ、スターとなった。アンディ・ウォーホルのミューズは、後にボブ・ディランとも関係する、60年代のポップ・アイコン、イーディ・セジウィックだった。

ミューズは一人でなく9人姉妹である。叙事詩、歴史、叙情詩、音楽、悲劇、宗教音楽、舞踊、喜劇、天文をそれぞれが司っている。ミューズは後に音楽から文芸、学問全般の神となり、ムーセイオン(ムーサの聖所)は学問を祭る場であった。博物館・美術館を意味するミュージアムmuseumは、アレクサンドリアに設立された研究・教育機関、ムーセイオンが発祥である。それがさらに現代のアレクサンドリア図書館にまでつながっている。

創造的組織を音楽組織になぞらえることはこれまでもなされてきた。オーケストラ組織(たとえばDELLのような動的バリュー・チェーン企業)、ジャズ組織(プロジェクト型組織)、セルフ・プレイング・ピアノのような組織(エレクトロルクスのような多国籍企業)などだ。

音楽、詩、演劇。これらはミューズ的芸術と言われるが、何よりもジャズのような「即興」の神と言っていい。霊感をもたらし、即興する。ミューズ的組織とは、霊感を重視し、即興的にコラボレーションを行っていくような、感性に優れたネットワーク型組織やプロジェクト組織といっていいだろう。その日常は忙しく、トレンドを吸収し、次々とアイデアや商品を繰り出していくタイプの企業である。

aphrodite
大英博物館のアフロディテ像。美の女神アフロディテ(ヴィーナス)はしばしばミューズと行動を共にし、一部では同一視されてきた。(Photo by Noboru Konno)


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創造的組織の資質(2)創造神-1 アトム
ここでいう「アトム」は鉄腕アトムのアトム(atom 原子)ではない。
紛らわしいかもしれないが、アトゥム(atum)というエジプト神だ。ただ、アトゥムはアトム(Atom)、アテム(Atem)、トゥム(Tum)、テム(Temu)などとも書かれるのだ。

基本的には単一神であり、後に太陽神と合体するから、あながちアトムとも関わりがないわけではない。原子のアトムとは、それ以上は分割することができない、物質を構成する基本的な単位粒子である。語源はギリシア語で「分割できない」=アトモス(ατομοζ)といわれる。太陽もまたそうではないか?

エジプトのアトゥムは、エジプトの九柱神(Ennead)の筆頭の一柱で、原初の丘ヌン(混沌)より生まれ出でた天地創造の神だ。最初、アトゥムはただ独りの神であったので、自己の受精作用(自慰)によって大気の神シューと湿気の女神テフヌトを生んだ。そしてこの二神から、大地の神ゲブ、天空の女神ヌトが生まれ、天地が創造された。

つまり、アトム(アトゥム)とは、「無から生む神」なのだ。血と汗と涙の、いわば創業者の神である。自慰によって創造と生みの苦しみを経た、と言ってしまえばそうだが、要は「クレージー」な創造だ。

アップルのThink Differentという広告キャンペーンがあった。そこに登場したのは、スティーブ・ジョブズをはじめ、パブロ・ピカソ、アルベルト・アインシュタイン、トーマス・エジソン、マイルス・デイビス、ジョン・レノン&ヨーコ・オノ、ボブ・ディラン、チャーリー・チャップリン、フランシス・コッポラである。

創造的組織の第一の類型は、クレージーな創業者によって無から生み出された、分ちがたい一体の組織である。論理や分析的視点では語ることのできない存在でもある。論理や分析は「分ける」ことから始まるからである。

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コペンハーゲン王宮広場の波の噴水オブジェ(Photo by Noboru Konno)

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創造的組織の資質(1)
組織と個人の創造性をあらためて考えてみようと思った。

創造性というと、どうしても個人レベルでの発想法や創造的思考法、つまりよいアイデアが沢山出るようになるにはどうするか、といった話が多い。脳の創造のメカニズムといった話もこれに含まれる。
あるいは組織の創造性として、集団的創造性についての話が多い。とくに日本企業は集団的創造性に勝る、といった話だ。いずれも、ずいぶん前から言われていることだが、それが「再生産」され、繰り返し述べられてきた。

しかし、現場での創造性は個人のレベルでのステップや手順からではなく,社会的な相互作用の中から生まれるというのが実感だし、集団的創造というのも、何か失われた日本企業の特質として語られているようなところが多い。つまり、いまここで何か有用なことにはなっていないのが実情だ。

いまいちど創造性について、創造がどのように起きるのか、「創造神」になぞって考えてみたい、と思った。「創造神」とは、「世界、人間、文化などを創造した神」をいう。これにはさまざまなパタンやタイプがある。そこで次の9つのパタン---9柱の神々を想定した。

1.無から生む神 アトム 
2.学芸の神 ミューズ 
3.運命の神 フォルトゥナ
4.創造/破壊/維持の神々 
5.インスピレーションの神あるいは低級な精霊 
6.デザインする神 デミウルゴス 
7.トリックスター神 周縁からの創造
8.荘厳な創造神 ギリシャ神話の神々
9.農耕的創造神 日本の八百万神

これらについて考えてみたい。


伎楽面・治道(東京国立博物館)(Photo by Noboru Konno)

治道は神々の行列の露払い的な役目をもつキャラクターだ。


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